電子取引の「紙による保存」の経過措置が発表されました
■久しぶりに、更新しました。コロナ対応の継続の中で、インボイス制度の適格請求書等発行事業者登録の開始など、重要な動きが続いています。その中で、来年から始まる改正に関して、今回、考えています。
■電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(以下、電子帳簿保存法と呼びます)の改正のうち、インターネット取引による売買などの取引データの保存方法について、税制調査会での批判を受けて、一定の宥恕規定(ゆうじょきてい=やむを得ない場合には・・・でよい、という規定の仕方)が2年間設けられるとされていました。
■今回、省令改正により、その内容が明らかにされました。
■すなわち、従来(令和3年12月31日まで)、電子取引を行った場合、その内容を印刷したものを保存すれば、その要件を満たすとされていた扱いが、令和4年1月1日以後の取引については、電子データのまま、検索が可能な方法など一定の形で保存しなければならない、と電子帳簿保存法の改正により、変更されました。これについて、与党税制改正大綱のなかで、事業者の準備状況を勘案して、令和5年12月末まで、やむを得ない場合には、一定の条件のもと、紙による印刷保存の方法が可能となるとされていましたが、その内容が、明らかになりました。
■A.具体的には、今の改正法の省令の中で、宥恕規定の要件が次のようになっていました。
- 災害その他やむを得ない事情があり
- かつ、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存をすることが出来なかったことを証明すること
■B.しかし、これだけでなく、次の場合も加わりました。
- 所轄税務署長が・・・電磁的記録の保存をすることが出来なかったことについてやむを得ない事情があると認め
- かつ、その電磁的記録を出力することにより作成した書面の提示、又は提出の要求に応じることが出来るようにしていること
- ただし、その出力は、整然とした形式及び明りょうな状態で出力されたものに限る
■ただし、災害その他やむを得ない事情や、所轄税務署長がやむを得ないと認めた事情がなかったとしても、電磁的記録の保存をすることが出来なかったと認められるときは、この宥恕規定は適用とならない、とされています。(事情のいかんにかかわらず、電磁的記録の保存ができない状態である、という意味?)
■「電磁的記録の保存をすることが出来なかったことについてやむを得ない事情」について、通達やQ&Aで、その例示を明らかにするのかもしれませんが、おそらくシステムの整備が間に合わないという事情を斟酌する内容となるのだろうと思います。しかし、2年間限定なのだから、「災害その他やむを得ない」に加えて、コンピュータシステムの整備の遅れその他やむを得ない事情など、「税務署長が認める」事例を、法令に例示すべきだったのではなかったか、と思います。
【財務省令 第八十号による 令和3年12月27日改正】