東京都 台東区の税理士 清水和男税理士事務所

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TKC経営支援セミナー2017報告①

 1月12日、好評のうちにTKC経営支援セミナー2017を開催しました。全体3部構成で、第一部は「地域金融に対する金融行政の現状と中小企業の対応策」、第二部はDVDコンテンツ「金融機関との対話を深め『会計で会社を強くする』には」、そして第三部は独立行政法人 中小企業基盤整備機構の後援により冊子「『経営力向上』のヒント」を使って会社の経営成績向上、資金管理のための基礎について、それぞれ講演、研修を行いました。
 ここでは、第一部の講演の概要を紹介します。なお、ここに記載する際、一部追加補充しました。

 中小企業の現状と地域経済の停滞

 2014年の中小企業庁のデータによると全国の中小企業者の数は380.9万者で、比率にすると99.7%従業者数は、3,361万人で70.1%になります。これに対して、大企業の数は1.1万者(0.3%)に過ぎず、その従業者にしても1,433万人(29.9%)です。政府の経済政策の効果が、主に大企業とその従業者に及ぶとしても、経済全体への波及が遅々としたものであることも、また頷けます。

 また、中小企業者の推移ですが、1999年の483.7万者から年々減少し、2014年は上に述べたように380.9万者と15年の間に100万者以上の減少、2009年からの5年間の推移でも420.1万者から40万者近くも減少している状態です。これに対して、休廃業・解散の件数は、東京商工リサーチのデータでは、年々の様に増加して、2016年は29,583で前年比8.2%の増加です。しかし、倒産の数は年々減少し、2016年は8,446件で前年比4.15%減少しており、休廃業・解散の件数が倒産件数の3.5倍に達しています。この休廃業・解散時の代表者の年齢が60代以上が82.3%に達するなど、高齢化により、事業承継をしないまま廃業・解散に至るという姿が見て取れます。(東京商工リサーチ 2016年「休廃業・解散企業」動向調査より)

グラフ_貸付条件変更推移 金融庁の資料によると、平成21年12月に「中小企業金融円滑化法」を施行後、金融機関が貸付条件グラフ_信用保証下条件変更推移の変更等に努力した結果、なお40万件を超える条件変更申し込み件数があり、信用保証の下での条件変更企業数も17万者を超えている状況です。(中小企業庁資料より)
 倒産件数の減少は、条件変更等の金融支援により支えられていることが読み取れます。反面では、経営者の側に、返済正常化に向けた意識や方向性を見失っていること、また金融機関の側からすると担保や信用保証に依存したまま、積極的に貸付先企業の経営支援を通じた企業価値の向上を図る意識が弱いことが見られます。

金融機関の金融仲介機能について、「日本型金融排除」に対する金融庁の方針

 こうした現状に対し、2015年7月に就任した森信親金融庁長官は、金融機関の金融仲介機能に関しては、①「金融仲介機能の質の改善に向けた取り組み」として、金融機関の融資先企業1,000社へのヒアリングを行い、取引金融機関に対する顧客の評価を把握し、それをもとに金融仲介機能の質の改善を目指すという方針を打ち出し、外部有識者を含めた検討会議を組織。そして、②地方創生にむけた金融仲介の取組に関して、画一的なマニュアルでなく、多様なベンチマークを活用した客観的な評価を通じて、金融機関との議論を行う。③事業性評価とそれに基づく取引先企業との深度ある対話により、その解決策の提案・実行支援等を通じて、その生産性向上と地域経済・産業の促進を行うべきこと、などを明らかにしました。(平成27事務年度金融行政方針より)

 こうした方針を踏まえて、平成28年9月、「金融仲介機能のベンチマーク」を公表し、これにより、各金融機関に共通の3項目および選択ベンチマーク12項目、合計50件のベンチマークに用いて、客観的な自己評価を促し、経営陣と深度ある対話を実施する。さらに融資に関して、十分な担保・保証のある先や高い信用力のある先以外に対する金融機関の取組が十分でないために、企業価値の向上が実現できず、金融機関自身もビジネスチャンスを逃している状況(「日本型金融排除」)が生じていないかについて、実態把握をおこない、「金融仲介機能のベンチマーク」等の客観的な指標を活用して行くとしています。(平成28事務年度金融行政方針より)

「事業性評価融資」と「情報の非対称性」

 「金融仲介機能のベンチマーク」の選択ベンチマーク「(2)事業性評価に基づく融資等、担保・保証に過度に依存しない融資」の中の筆頭に「5.事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数」とあるように、各金融機関が選択したベンチマークにより、自己評価しながら金融仲介機能を向上させていることが期待されているわけです。

 この「事業性評価融資」とは、言い換えると、従来金融機関の自己査定において、「要注意先」・「要管理先」と格付けされ、新規貸し付けの対象外とされていた取引先企業に対しても、融資を継続しなさいということになりますが、それは、現在の財務内容や経営成績だけで判断せず、事業内容や成長性などに着目して評価すべきことを意味します。しかし、ここで問題となるのが、借り手である取引先企業自身は、詳細な財務データや将来の計画、将来の業績見込みなどの自社情報を持っているが、貸し手となる金融機関が持っている借り手企業に対する情報は限られている。せいぜい、過去の決算書だけとなると、「事業性評価」など不可能となります。また、支店の法人担当者などもなおさら、決算書から成長性などを知ることはできない。こうした現象を、「情報の非対称性」と呼び、ノーベル経済学賞を受賞したジョージ・アカロフが発表した理論が基礎になっているそうです。

「ローカルベンチマーク」を活用し、積極的に金融機関との対話を

 TBSテレビで放映されていた「半沢直樹」をご存知ですか。その第一話で、主人公の子供時代、笑福亭鶴瓶演ずる父親の経営する工場が、取引先の倒産にあって、予定していた入金がないと手形が決済できない、と、金融機関の担当者に泣きつくシーンがありました。当時の設定は、貸し渋り、貸し剥しと言われた時代。しかし、現在の設定であっても、やはり、手形が落とせないから、助けてくれ、だけで融資してくれる金融機関はないでしょうね。

 こうした企業の経営者等と金融機関、認定支援機関との対話を深めることを念頭に置いて、経産省・中小企業庁では平成27年5月から検討会を持ち、検討を行った結果、「ローカルベンチマーク」(通称ロカベン)を作成しました。その中で、まず第一段階として、地域の経済・産業の現状と見通しの把握に立って、第二段階として、個別企業の経営力の評価と経営改善に向けた対話を、財務情報・非財務情報を整理しながら、行うことが想定されています。そのためのツールとして、作成されました。

 その中で、財務情報の理解のために、経営力向上のツールとしての会計を学び、また非財務情報にも掲げられているように、自社の置かれている環境やバリューチェーンを理解し、自社の強みや弱みを踏まえ、経営理念やビジョンを明確にして、経営改善に取り組むとともに、積極的に金融機関との対話を行うことが期待されています。

 当事務所は、このために、企業の自計化をお手伝いし、また、これを基礎とした経営改善に積極的に取り組みます。

▶TKC経営支援セミナー2017報告②に続きます。