東京都 台東区の税理士 清水和男税理士事務所

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節税対策の孫養子も合法/最高裁が判断

 すでに他界した親が、長男の子を養子としたことにより、相続分が侵害されるとして、長女および次女が、この養子縁組は相続税対策を目的としたものであり、「縁組の意思がなく無効」との確認を求めて、争っていた裁判に、最高裁第3小法廷が、「相続税節税という動機と養子縁組に必要な『縁組の意思』は併存しうる」として、有効との判断を下した(2月1日朝刊各紙)。従来も同様の裁判はあり(宇都宮地裁 昭和36年11月16日、東京高裁 昭和37年7月23日、最高裁第二小法廷 昭和38年12月20日)、税理士にとっても、関心のある問題であることから、この問題を取り上げてみる。

税理士にとっての民法の意義

 租税法(税金に関する法)と私法(民法など私人間の関係を律する法)との関係については、「租税法は、種々の経済活動ないし経済現象を課税の対象としているが、それらの活動ないし現象は、第一次的には私法によって規律されている。租税法律主義の目的である法的安定性を確保するためには、課税は、原則として私法上の法律関係に即して行われるべきである。(金子宏『租税法』)」とされている。そして、この租税法の適用に際しては、まず、事実について、まず私法上の法律構成を、私法上の要件事実の認定を通して把握しなければならないとされている(増田英敏『リーガルマインド租税法』ほか)。
 相続対策として広く行われている「手法」である孫養子が、相続税の軽減を図る意図があると認定された場合に、その養子縁組そのものが無効であるとなれば、影響は大きいことから、今回の訴訟については注目されていた。
 今回の訴訟・判決の詳細は、判例テータベース等にはまだ収録されていないが、報道を見る限り、主張の詳細部分に相違があるか不明だが、従来あった訴訟と基本構造は同じであると思われる。

民法の養子縁組の無効事由

 民法では、養子縁組について、「次に掲げる場合に限り、無効とする」として、1.「人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき」、2.「当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第799条(婚姻の規定の準用)において準用する第739条第2項に定める方式(届出の手続)を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない」とあるのみである。

 上に掲載した前例のケースは、次男が原告となり、「養子縁組によって創設さるべき親子関係は、未成年養子における養育関係と老年養親の身辺の世話と財産管理をその本質的要素」とするものであって、「このような習俗的観念における親子関係の創設が意図されていない」原告の「相続分を害する目的でなした養子縁組」であるから、この養子縁組は無効であるとの主張したもの。
 これに対し、判決は、親には「控訴人(原告)の相続分を排して孫の被控訴人(被告)らにこれを取得せしめる意思が・・・あった」と同時に「真実養親子関係を成立せしめる意思も亦十分にあったと認められる」として、孫に財産を相続させるために真実の養子縁組の意思があったのだから、無効ではないとの結論を下した。このケースでは、被告の答弁によると、次男が早くに家出して結婚し、まったく家に寄りつかなかったことから、親は家名を汚されたと憤慨していたという事情もあった。

 民法では、養子縁組について、「次に掲げる場合に限り、無効とする」として、1.「人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき」、2.「当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第799条(婚姻の規定の準用)において準用する第739条第2項に定める方式(届出の手続)を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない」とあるのみである(民法802条)。
 学説(実質的意思説)および上告人(この次男)の代理人弁護士の上告理由書によると、この第一号「縁組をする意思がないとき」とは従来習俗的観念における親子関係を創設する目的でならされものではなくして、他の目的を要素としてなされた縁組又は他の目的を達するための便法として養子縁組なる制度を利用した場合はこれに該当するものとされていた。しかし、「近年は、身分行為意思を民法上の定型的な法律効果に向けられた意思とみる説(法律的定型説)が有力となっており、それによれば、縁組意思とは『民法上の養親子関係の定型に向けられた効果意思』ということになる」と言われている(『日本評論社インターネットコンメンタール』)。

 いずれにせよ、今回の最高裁判決は、相続税対策であってもそのために養親子関係を創設する意思があった、と認定したものと思われる。

平成29年2月5日